死線に立つ

 

患者さんはほぼ意識の無い状態で。

夢心地だ。

僕らは淡々と手術を続ける。

目が覚めて決まって言うのです、「もう終わったんですか?」。

僕は時計を指さして笑いながら「もう3時間経ってますよ」そう言い返すのです。

 

静脈内鎮静法で手術すると皆一様に、とても感謝されます。

ただ患者さんは知らないのです、彼らの命が麻酔科医の手に握られていたことを。

 

実は意識をコントロールする麻酔はとても危険な行為なのです。

安全に麻酔をかけるには、相当の経験と知識が必要なのです。

よくいろんなホームページに「とても安全な麻酔です」なんて書いてありますが、

そんなの嘘です。

麻酔科医の腕次第です。

 

 

 

40年手術室に立ち、人の生死と向き合ってきた麻酔科医師。

死線に立ち続けた教授。

 

だから僕らはどんな難易度の高いオペもこなせるのです。

これが若手の麻酔科歯科医師だったら無理だろうな。

 

 

だから僕は意地悪な質問を麻酔科歯科医師にするのです。

「オペ中に心停止したことは何回ありますか?」

「何人の患者さんの死に立ち会いましたか?」

「日に、週にでもいいですが、何件オペしてますか?」

 

 

若手の麻酔科歯科医師がよく言うのです。

「人の命がかかってますからね、安売りはしないんです。最低1オペ3~5万はもらわないと。」

大した経験も知識もない彼らでも、一応わかっているのです、麻酔の危険性を。

 

 

うちのクリニックでは歯科恐怖症の方には普通に保険診療で鎮静をしています。

2000円もかからないです。

これが日本という国の、歯科麻酔に対する評価なのです。

この低すぎる評価が歯科麻酔の鎮静法を自費治療にしてしまったのです。

保険診療で麻酔科医を雇って鎮静をかけてもらえば、とてつもない赤字になります。

一人当たり麻酔科医にまけてもらって、3万払ったとして、まあ25000円の赤字です。

だから治療するドクターが鎮静をかけて、治療しながら患者さんの全身管理をせざるをえないのです。

そして事故が多発するのです。

 

 

 

 

若手麻酔科歯科医師の方に僕は願うのです。

もっと保険診療で鎮静をかけて経験を積んでください。

そして様々なトラブルを体験して対処してください。

糞みたいなプライドを捨てて社会貢献してみてはどうですか?

日本の保険制度では無視されていますが、あなたを必要としている患者さんはたくさんいるのです。

 パニック障害、歯科恐怖症、治療中に暴れてしまう知的障害の方、高すぎる高血圧、

脳梗塞、嘔吐反射が強すぎて治療不可能な方。

いくらでも書けます。みんな歯科麻酔医を必要としているのです。それも保険診療で。

 

 

口だけの麻酔科歯科医師なんて鼻で笑われるだけです。

あなた達の立ち位置が僕には分かりません。

だっていいですか、麻酔科医師を雇ったほうが安くつくし、安心で安全なんて。

 

今日の僕は口が悪いです。

明日はオペが10件入ってます。

もう寝ないと。

 

おやすみなさい。